黒い細長丸玉に15のアイ、ローマン後期の重ね貼り目玉　明るい青の4層や2層のアイ

本品は、細長丸玉の黒い胎いっぱいに、15のアイを施したローマン後期のアイ・ビーズです。イスタンブルの大バザール内の、しっかりした造りのビーズ専門店で購入した連に編まれていました。古いビーズの供給地のアフガニスタンや中央アジアから入手したと説明されました。
　本品には、数種のアイが施されています。第1は、4層アイで、白い保護円盤、茶の薄い輪、白い保護円盤、その上に、縁に茶の線と水色のアイ、この4層になっています（1枚めなど）。4層アイの中心の明るい透明なコバルト青が美しいアイとなっています。第2は、2層アイで、幅広の白い保護円盤に青いアイを施したアイと、白い保護円盤に暗い青緑のアイが施されています。前者の青いアイは、明るい透明の青で、保護円盤の白も映って綺麗なコバルト青が見られ、このコバルト青では気泡は見えませんが、暗い青緑アイには小さな気泡があります。
　一般的には、同一ビーズのアイなど同一個所には、同質ガラスが用いられますが、青ガラスの製造時に含まれた素材や、施された保護円盤の材質などにより、アイの青に若干の相違が生じますので、本品でもこうした違いに拠るかもしれません。ただ、コバルト青は当時、極めて高価でしたので、ビーズ職人がコバルト青ガラスの使用を抑制したかもしれません。
　黒い薄緑のアイの近くには、保護円盤と本来アイが置かれたはずの箇所に薄茶ガラスが置かれた、不鮮明なアイも見られます（5枚め）。この薄茶ガラスには、小さな気泡跡が見られ、穿孔された上下の面には、透明な薄茶ガラスには、本品の巻き製法を示すように巻いた跡と長く伸びた気泡が見えます。
　本品は、1-5C頃に制作されたアイ・ビーズと想定され、入手時の説明からアフガニスタンなどに存在し入手されたビーズと言えそうです。研究書　A Bead Timelineでは、400年頃の欄に、重ね貼り目ローマン・ビーズ十数例が後期ローマン・ビーズとして、前300年～後100年頃のアイ・ビーズとは別に掲載されています。掲載された後期ローマンの重ね貼り目ビーズは、以前のアイより多くのアイが胎いっぱい施されているようです。
　本品は、理由は不明ながら、数種のアイが施され、フェニキア期などのアイ・ビーズと比較し確かめたくさえてくれるアイ・ビーズです。
サイズ：高さ　約10㍉　幅　約9㍉　孔径　約3.5㍉

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